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『ファルスタッフ』@東京文化会館

スカラ座のオペラ版『ウィンザーの陽気な女房たち』、シェイクスピアをイタリア語で聞くのはなかなか面白い経験。

けど、英米文学科出身でシェイクスピアこそ英米文学の祖とたたきこまれているので、どうせふつうの英語での演劇版のほうが…、とか思ってしまって予習する気がなく、そもそもどうしても翌日のドゥダメルの良席を確保したいがためにセットで買ったようなものだし、とか言ってると拾いもんだったりするから、予習しといたほうがいいのか…

と、あまり乗り気じゃなかったのですが、代役が代役とは思えない出来映えでした。今回のスカラ座公演では『リゴレット』でもマントヴァ公爵が差し替えになったのですが、『ファルスタッフ』でもフォード役が差し替えだったのです。座骨神経痛ということでしたが。

さて『ファルスタッフ』、全体的に声量が足りない感じ。東京文化会館で一階一桁列中央寄りの席なのに、TV視聴程度の迫力でこのチケット代はちょっとないよなあ、と。しょせんは夏の極東ドサ回りということなのかしらと、終わってから公園内の立地なのにPARK SIDE CAFEとはこはいかに、というお店で家族とごはん食べつつ愚痴ったりしました。さすがにファルスタッフと「女房たち」はみなさん、素晴らしい歌と声でしたが(特にパンチの効いたクイックリー夫人は、先日のロイヤルバレエ版アリスのハートの女王を彷彿とさせる絶妙のコメディエンヌっぷりがすばらしかった!)、フェントン役の独唱が、「そんな小さい声で愛を語るな!」という残念感。

ただ、演出や舞台美術、衣装はとても素敵! ファルスタッフが夜の公園で妖精に扮した人々に取り囲まれるところは、実にシェイクスピア的で幻想的だし、そのあとの大団円は、女性たちが多種多様な赤いドレスのヴァリエーションで並び、しかもテーブルをファッションショーのランウェイのように進みながら歌ってくれる素敵な演出でした。ほかにもとにかく舞台美術や小道具、お洋服が歌わない脇役にいたるまで素敵で、すべて近くでじろじろ見たいくらいでした。 

さて、明日のドゥダメルリゴレット、ジルダ役が写真で見るに乳母っぽいおばさん歌手なのもあり、台風が来るともいうし、いろいろちょっと不安。そもそもドゥダメルは先日、ベルリン・フィルとのツァラトゥストラの録音にコレジャナイ感を抱いてしまっているので…。

先にこのプログラムを見ている知人の感想もまことに微妙…。ちなみに明日も衣装は素晴らしいみたいです。現代的な『ファルスタッフ』とは真逆にクラシカルになるようですが。