『ブルーム・オブ・イエスタディ』@ル・シネマ
晴れの休日なので世田谷文学館に行こうと調べたらお休み。じゃあル・シネマで映画を見ようと『ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ』と迷って『ブルーム・オブ・イエスタディ』に。タイトルと予告編から「昨日咲いた花は今日は咲かない、みたいな悲しい話か?」と思ったのですが、ぜんぜん違いました。コメディでした。といっても、けっこうブラックです。『ELLE』ほどではないけども。というわけでネタバレありの感想。
登場人物が一癖、というより、一見、ダメ人間が多い(苦笑)。職場で口論の末、歯が折れるほど同僚を殴っちゃうザビエル禿の40歳とか、イタい不思議ちゃんとか。でも、彼や彼女がどうしてそうなのか、ということがだんだん分かってきます。宣伝では「ナチスを祖父に持つ男とフランス系ユダヤ人女性が恋に落ちたら―。」とか書いてあるけど、二人はそんなにすぐに恋に落ちるわけではなくて、この、観客が二人を「だんだんわかってくる」過程でそうなっていくのです。そのシンクロ加減の塩梅がすばらしい。コルビュジェ映画におしゃれな観賞体験を求める人には向かないかもしれないけど、泥臭くて人間臭くて、いい映画でした。
日本でも元ネトウヨと在日3世の間で起こり得る関係性だけど、映画では主人公たちが学者、それもホロコースト研究が専門なせいか、きちんと言葉にして話し合うことを放棄しないところに希望が持てます。ほかの映画を見に行った時にこの予告編を見て、ネトウヨやブサヨと揶揄される人が見たら、どう感じるのかな、などと考えていました。
ところでこの映画でひさびさにボカシというものに遭遇したのですが、これが映画のテーマに密接に関係しているので、興醒めというか、映画の価値を毀損しているようにさえ見えました。ずっと悩んでいた性的不能が解消される、はずのシーンなのですが、なんせボカシが入っているので、解消されての感動の涙なのか、がんばったけどやっぱりだめだったよの落胆の涙なのか、はっきりしないのですよ。R18とかにしたらボカシなし、とかにしてほしいなあ。この映画はR15だけども。
で、ニューズウィークのこの映画評を読んで、ボカシによる肩透かしの補填をしましたとさ。