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『パートナー法は突然に / Suddenly, Last Winter』@スパイラルホール

イタリアでパートナー法・DICO*1が成立するかどうか、についてのドキュメンタリー、というとくそ真面目なだけの作品みたいですが、これがとってもカラッとしたタッチで時折、皮肉な笑いで会場が何度も大笑いに巻き込まれました。パンフレットには「あの冬、彼らが見たものと届かなかった夢の記録」なんてセンチメンタルなコピーがあったので、めそめそした映画だったらどうしようとちょっと心配してたので、これはうれしい想定外。


が、収録されてるイタリアの一般市民のDICOやゲイへの偏見はけっこう、いやかなり厳しいものがあります。というかゲイに限らず、結婚して子どもを産み育てる、という以外の人生に対して厳しいものだらけ! そういうのばっかり集めたんだったらいいのにっていうくらい、厳しい。曰く「自然に反してる」「同性の『結婚』を認めたら次は三人でとか飼い犬と、とか言い出して家族の定義が崩れる」「同性カップルが養子を取る権利を与えられるなら、ペドフィリアにも幼児を与えなくちゃねw」「男女で結婚してても子どもがいなくちゃほんとの夫婦とはいえない」etc,etc… こんなことを演説している神父を含む一派の拡声器でのイタリア語の『主の祈り』と黒い祭服は、まるでサバト開始の合図のようにさえ思えてしまうほど。


いやー、とにかくもう、ゲイと子なしに関するものすっごい拒否反応の雨霰にかなり退きました。バチカンサン・ピエトロ寺院前の広場でインタビューされた伝統的なローマ・カトリックの修道女二人なんて、「DICOについてどう思いますか?」と聞かれた途端、にこやかな顔がいきなりばりっと音でも立てそうに固まって「考えることさえ罪だと思います」ですってよ。さすがマンマを称える国というか、バチカンを擁する国というか… DICO擁護集会での、品のいい老婦人が「彼らにだって権利はあるし、迷惑かけてないじゃないの…」と言っている映像が差し挟まれるのが救いです。


ところでこうなってくると気になるのは、イタリアのお隣、フランスのパートナー法は同性同士のカップルにも権利がある法律なのかどうか、ということです。この映画のなかで聞いた限りでは、どうやらスペインは同性同士にも権利のあるパートナー法を施行しているようなのですが。

*1:同性同士のカップルでも結婚している男女のような権利が行使できる法律。たとえば救急車でパートナーが運ばれた時の手術の同意とか、賃貸契約者である片方が遺言なしに亡くなっても残されたもう一人が引き続きその住居に住まい続けられる、などなど。