映画『仁光の受難』でボレロを踊っているのは誰?
東京・新宿の角川シネマ新宿にて、10月6日まで上映の『仁光の受難』という映画を見たのですが、その中で赤い円卓の上で能の女面をつけたダンサーが、モーリス・ベジャールの『ボレロ』をほぼまるごと踊るシーンがありました。踊っているのは「結樺レイナ」という女性とのこと。なお、映画内で『ボレロ』が踊られるシーンの音楽は、和楽器で奏でられるモーリス・ラヴェルの『ボレロ』です。
わたしのこれまでの記憶では、ベジャールの『ボレロ』はベジャールさんか、モーリス・ベジャール・バレエ団が許可したダンサーしか踊ることを許されていない作品で、日本人女性で踊ることを許可されているのは東京バレエ団の上野水香さんだけだと思っておりましたが、これはいったい……?
エンドロールにはベジャールのクレジットはなし。「結樺レイナ」さんのダンスはお面をつけているとはいえ、上野水香さんの身体と踊りではなかったし、ダンスではあったかもしれないけどバレエではなく、そもそもバレエダンサーの身体でもありませんでした。うーん、もやもやするなあ~。
で、ちょっと検索してみたら、ツイッターにこんな発言が。
【急募その2】ボレロを踊れるバレエ経験者。辻岡正人主演映画『仁光の受難』では、ボレロを踊れる(踊ったことがある、部分部分だけなら踊れる)バレエ経験者を探しています。ご出演、または指導のみ、またはご相談だけでもかまいまわないので、一度お話をさせて頂きたいです。よろしくお願いします。
— 庭月野議啓 (@Dir_NIWATCH) 2012年9月28日
そしてウェブに監督のインタビューがあり、その中でボレロについて以下のような発言がありました。
庭月野 もともと「ボレロ」が好きだったというのもあるのですが、脚本を書いている時期にバレエの「ボレロ」を見る機会があってたのですが、そのときに踊りの意味を調べました。
テーマは酒場の踊り子が踊りだし、周りの客は踊り子に見向きもせずに飲んでいたら、踊りが熱を帯びていくと客たちも注目しだし、踊りが激しくなってくると、客たちも熱狂していき狂乱の渦になっていくというものです。
これはバレエのほうの『ボレロ』の意味ではなく、曲のほうの意味なのですが、いいのかなあ。曲の著作権は本国では切れているけど、バレエの振り付けのほうの著作権は切れていないはず。そして、バレエの『ボレロ』が注目を浴びたのは、ジョルジュ・ドンという男性バレエ・ダンサーが踊ったことによると思うのですが。もやもやする~。
「横浜ベイサイドバレエ」Dance Dance Dance @YOKOHAMA 2015
シルヴィ・ギエムの『ボレロ』ばかり追いかけていましたが、上野水香さんも、いつのまにか、彼女の『ボレロ』をしっかり確立してたんですね。上野水香さんのインタビューにも
モーリス・ラヴェル作曲「ボレロ」にモーリス・ベジャールが振り付けたバレエ作品「ボレロ」は、モーリス・ベジャール・バレエ団が許可したダンサーしか踊ることを許されていない特別な作品だ。
と、あります。うーん、もやもや……。