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霊長類ヒト科アゲアシトリ属ジュウバコツツキ目の妄想多め日録

ドッペルさんに出逢ったら

とある最近の土日祝出勤の日、また職場近辺にドッペルゲンガーがあらわれた。出社してからずっとオフィスにいるのに、外から戻ってきた後輩に「あれ? Mmcさん、さっきセブンのほうにいました?」って言われたのだ。こうなってくると、怖いとか気味悪いとかよりも好奇心が勝ってきてしまい、ドッペルゲンガーの人すなわちドッペルさんと一度、会ってみたいものだなあ、と思う。しかし、会ってしまうとSF的に対消滅したりするのだろうか。

 

そんなことがあってのおととい、最終営業日の宇田川マメヒコで、友だちとドッペルさんの話になった。その友だちもドッペルさん経験があるとのこと。友だちを仮にKさんとしておく。

Kさんドッペルゲンガーにもし会ったら、まずなんて言いますか?」
Mmc「そこはやっぱり『やっと会えたね』でしょう」

ドッペルさんはどうやら自分と同年代っぽいので、そこはやはり辻仁成がパリのシャルル・ドゴール空港で中山美穂と会ったときの第一声とされるこの言葉を言わざるを得ない。

Mmc「まあ、そのときの状況によって恨みがましい『やっと会えたね』になるのか、興味津々の『やっと会えたね』になるかはわからないけど。あと向こうから恨みがましく『あなただったんですね』と言われる可能性もあるし」
Kさん「なぜですか?」
Mmc「だってさあ、そんなに似てるってことは、お互い相手のドッペルさんのほうの知り合いが横断歩道の向こうから挨拶しても無視して、相手の無視が自分の不利益になってるっていうこともありえるわけで」

ちなみにこれはわたしが高校や大学のころのドッペルさん被害で、その日その時間その場所に絶対いなかったのに、「昨日、無視したでしょ」と友人知人に詰られた経験によるのと、そもそもわたしは歩いているときかなりぼけーっとしているので、自分の知りいであってもごく近くに来るまで気づかなかったりすることによる。すると、自分以外のぼけぼけによる煽りをドッペルさんが被って不利益、不可解、不愉快を感じていてもおかしくはない。

Kさん「いやあ、でもわたしなんてMmcさんよりそういうのもっとやらかしてると思うから、Mmcさん二人分のやらかしくらいでちょうどいいんじゃないですか?」

うう、Kさんに、どうもちゃんとした人間だと誤解されているような気がする……。

 

なお、わたしのドッペルさんは現在、都内に少なくとも二人いるらしい。目撃者によれば一人は職場の街、一人は自宅の徒歩圏内である。

自宅の徒歩圏内のほうは、整体の先生がよく見かけるようなので、そのドッペルさんがこの整体に通ってくれれば、職場近辺と自宅近辺のドッペルさんが同一人物か否か、また渋谷西武のMUJIカフェでわたしが間違われた「ミズノさん」とやら、そして大学時代隣の学部でわたしの高校時代の同級生と二人展を開いた人物と同一人物かどうかが確認できる。実際に会うとSF的に対消滅してしまうかもしれないが、周辺情報から都内にいるドッペルさんの人数を確定するくらいはしてみたいのだ。

という話をしていたらKさんがぽつりと、「でもあんまり近づかないほうがいいのかもしれません」と、言った。

「前にわたしのドッペルゲンガー体験をお話ししたことあると思うんですが、その相手のほうなんですが、風の噂で入院したと何年も前に聞いてから、音沙汰がないんですよね。その対消滅の話でいえば、こっちのほうが生き残ったのかなって」

うむ、たしかにそうなってしまうと、『ドリアン・グレイの肖像』のようで、あまり後味はよろしくない。それに、後輩も言っていた。「この街で土日祝出勤ということは、同業者の可能性が高いです。それが対消滅したら、二つの職場でかなりの混乱が起きるのでは……」と。