読んだり食べたり書き付けたり

霊長類ヒト科アゲアシトリ属ジュウバコツツキ目の妄想多め日録

ちょっとばかりゲームのシナリオっぽいような

イノセンス After the Long Goodbyeと、思うのは、わたしが国産SFを読み慣れていないからか? でも全体に面白かった。巻末の対談は映画のほうを観るのに、押井の世界観を知るにも役立つかも。

さてこの『イノセンス After the Long Goodbye』、一読した印象は、「静寂」。主人公の頭の中には始終、ループしている音楽があると記述されるのだけど、終始、主人公の一人称で語られるこの世界は、わたしには静か過ぎてキーンと耳鳴りがするんじゃないかと思えるくらい、音のない世界。読んでいて頭の中に引き起こされる情景も、モノクロとは言わないけれど、重く垂れ込めた雨雲の下の、くすんだ景色。

これは、『GHOST IN THE SHELL』、TV版『攻殻』、『イノセンス』で、主人公の思うようには叶えられない切ない思いを知っているからなのか、それとも、単体の小説としてこれを読んでも同じ印象なのだろうか。もっとも、映像版のどの作品も、音楽や色彩が印象的に使われていることを思うと、山田正紀の捉えた主人公の心的状況が、くすんだ色のない世界、音楽が空回りしている世界なのかとも思う。