読んだり食べたり書き付けたり

霊長類ヒト科アゲアシトリ属ジュウバコツツキ目の妄想多め日録

『2046 [DVD]』

2046 [DVD]そしてこれは、妄想の電車のなかに物語のある映画。二番館のラスト1本割引で900円だし、絵葉書に写った景色が絵葉書どおりか確認するかのように見るにはいいか、と軽い気分で見に行ったのですが、まったく思っても見なかった事態に陥ってびっくり。
見終わって、帰ってきてから、日常的な会話で続けざまに連れとメールを交わすことで、ようやく落ち着いたところ。それぐらい、心を深く、かき乱されてしまったのです。
この映画のなにがそんなにわたしを動揺させたのかというと、うまくいかなかった恋、だいなしになった恋、ボタンを掛け違えっ放しの恋などなど、とにかく恋の駄目な思い出だけから抽出したらしきエキスが漂いまくっているところ。
音楽に、空の色に、雨の音に、口紅の剥げた唇に、そして、主人公が自分の駄目になった恋、駄目にしてしまった恋を小説に変換し続けている様子などなど。すべてが、過去の失恋時のつらい思い出の上に十重二十重に層になったその後の思い出を一突きに貫いて、いまやディティールは失われ、記憶の底で鈍い痛みだけになって凝っているわたしの失恋の思い出を、いちいちヒットするのです。
そんなわけで、もうすっかり腑抜けになって帰ってきました。