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霊長類ヒト科アゲアシトリ属ジュウバコツツキ目の妄想多め日録

体育館裏の自習者

ひさびさに、この話題。あまり近い係累の話はどうかと思ったのだが、おもしろいので、父の幼少期の話。

あるときのこと、当時小学生であったわたしの父、Mのクラスは自習時間中であった。しかし、小学生が、それも最近のではなく何十年も前の田舎の小学生が、おとなしく自習なんかしていられるわけがない。あっという間にうるさくなった教室に、となりのクラスの先生が乗り込んでくる。

「やかましい! ほかのクラスは授業やってるんだ! きちんと自分の席について自習しなさい、自習!」

しぶしぶながら、席に戻る子どもたち。それを見渡す教師。ひとつの机にひとつの椅子、ひとりの生徒、のはずが… とある机、椅子もなく、生徒もいない。

「おい、ここは誰の席だ?」
「Mくんです」
「どこ行った? 今日は休みか?」
「さっきまでいましたー」

そして、はじまるMの校内捜索。具合が悪くて保健室に行ったならば、椅子が一緒に消えているのはおかしいし、勝手に帰ったなら、さらに椅子が一緒に消えているのはいぶかしい。

写生でもしているのか? と思いきや、Mは、体育館の裏で、教室から持って出た椅子に腰掛け、自習時間に相当する教科書を、読んでいるところを発見された。

「…M、なんでこんなとこで本、読んでるんだ」

教師に問われ、M曰く。

「教室はうるさくて、自習、できませんから」

いやな子どもだなあ。しかし、ここまでではないが、小学生のころ、授業に納得感がないと先に進めなかったわたしは、そのときの父の気持ちは、なんとなく、わかるのである。