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『キャピタリズム〜マネーは踊る〜』@武蔵野館

今までのマイケル・ムーアの映画のなかでいちばんかもしれない。内部告発者が持ち出した資料込みのインタビューや金融支援法案に反対した議員たちへのインタビューで、みんながうっすら感じていたサブプライムリーマン・ショックの影法師みたいな姿をムーアはあぶり出す。そして、つかみどころがなかったそれらの真っ黒なマッスを突きつけてくる。


撮影中、サブプライム・ローンのせいで銀行に長年住んだ家を追い出される人々(アメリカでは8人に1人が7秒半ごとに銀行と警察による強制執行で家を強奪されているという!)に対して、法を破って守る保安官や「正式な書類がなければ居座ってOK!」と議場から呼びかける議員が出るなど、驚くような事態が起こり始める。それは今までムーアが映画で呼びかけてきた声に応えるかのような「行動」だ。


ムーアはずっと「オレひとりだけがこうやってお笑い突撃取材やってたってたかが知れてるんだよ、みんな行動してくれよ」と語りかけてきたけれど、合衆国政府のふざけた公的資金注入でとうとう「みんな」が動き出したんだ、と思うとなんだか涙が出てきてしまった。


ところでこの映画、音楽の使い方もよかった。冒頭いきなりイギー・ポップの「ルイルイ」が爆発。イギー・ポップ好きなので、映像もあいまっていきなり胸倉つかまれてひきずりこまれるような感じ。エンディングはまずジャズ・チューンで流れる「インターナショナル」がかっこいい。けど、そのあとに流れるフォーク・ソングの落ちで、「誰でもがキャピタリズムに踊らされ、利己的になりうる」というムーアの駄目押しがずしんとくる*1


なお、今回ムーアがPRのため来日した際の会見映像を産経新聞が公開しています。動画タイトルにナンバーが振られていない(何分割されてるんだよ!とイライラしながらチェックして以下のように並べました)、字幕なし(ムーアがしゃべったあとに通訳者が入りますが)など新聞社としてどうなの、とはちょっと思いますが、公開してくれてありがとう。あと、もうひとつのありがとうとしては、新宿武蔵野館はウェブに印刷して使う300円引きクーポンがあります*2

マイケル・ムーア監督 PRで初来日
(2)日本人へメッセージ
(3)直行!力士御用達の服店
(4)税関でご機嫌斜め?の巻
(5)会場は東証 ご機嫌!
(6)「パブリック・エネミーはつらいよ」
(7)米国にない日本の魅力
(8)Boys, Be Japan(米国と同じ道たどるな)
(9)さて、前置きはこれくらいで…
(10)映画の鬼才は撮影が苦手

*1:これらの挿入歌に関してはこちらのレビューがくわしい>http://newsweekjapan.jp/column/machiyama/2009/09/post-60.php

*2:http://shinjuku.musashino-k.jp/address.php