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霊長類ヒト科アゲアシトリ属ジュウバコツツキ目の妄想多め日録

『舟を編む』@下高井戸シネマ

見そびれていた映画『舟を編む』をようやく下高井戸シネマで。お盆だけど平日だし昼間だし、そんなに混んでないかな、と思ったら、大入り満員でパイプ椅子が並ぶほど!原作は三浦しをん、監督は『川の底からこんにちは』石井裕也と、好きなクリエイターばかり。その上、主役はいま『あまちゃん』で「ミズタク祭り」が開かれてる松田龍平。ある意味、ミズタク祭りを経てから見ると、より味わい深いかもしれません。

映画はまず冒頭でミズタク、じゃない、みっちゃんこと馬締光也の下宿・早雲荘が現れてまずびっくり。靴を脱いで上がり、共同の洗面所に台所、個室のドアはアールデコっぽいデザインでガラスのはまった引き戸、おおらかなおばあちゃん大家さん…。これは、わたしが高野秀行『ワセダ三畳青春記』を読んで妄想していた下宿屋・野々村荘そのものじゃないか? 

高野秀行氏は野々村荘で1989年から2000年まで、11年を過ごしているが、みっちゃんの早雲荘時代は1986年から2009年(映画では1995年から2009年の14年が描かれる)。高野氏の野々村荘時代とばっちり重なるのである。ちなみに外観を使用した建物の立地は急坂に面していて、早稲田というより神楽坂っぽさを感じるけれど、実際の立地は本郷だそう。

というわけで、まず下宿屋に心をわしづかみされてしまったのですが、原作とはかなり性格の改変されたみっちゃんの挙動不審っぷりから適度にミズタク萌えもできました。が、それよりなにより、見出し語24万語の『大渡海』を作る過程、というのが、この三年、製作期間六ヶ月ではありますが事典的なものを作っている身には、これまたツボにはまりまくりでした。嗚咽をこらえたシーンも多々あり。事典や辞典じゃなくても、出版物じゃなくても、手間暇のかかるものを作っている人は、きっといろいろなところで感じ入るに違いない!


ところで、この映画のオダジョーのミズタク(違)の薄い本って、どなたか作っておられたりしないのかしらん。