読んだり食べたり書き付けたり

霊長類ヒト科アゲアシトリ属ジュウバコツツキ目の妄想多め日録

アニミズムとサイエンスが出会うデザイン展@梅上山光明寺

土曜日はわりとあたたかい日だったので、夜は梅上山光明寺のイベント*1へ。お寺の門を入るとすぐ右手にポンポン菊を挿した「仏花光輪具」。手をかざしたりなどのこちらのアクションとは無関連な感じで光がまたたく。さらに入っていくと梅が咲いていて、百合を指したのやポンポン菊、ダリアを挿した仏花光輪具があり、近づく前から自己主張するかのようにまたたいたり、近づけばシャイな感じでアクションを止めてみたり。


東京タワー「石のイシ」で石蹴りのように遊んでいる若者と、それを撮影する若者を眺めながらテラスに上がる。すると、遠景に見えている東京タワーをモチーフにした「Landscsape Processing」が上映されていて幻惑される。紙コップにティーパックで一杯300円という破格の(苦笑)紅茶を飲みつつしばらく座って見ていたのだが、本堂内から聞こえるチベットの声明を切り取ったみたいな謎の音声というか音が気になり、靴を脱いで入る。


音の正体は入ってすぐ左に設置してある「ボツグ」。その名前からどうしても芥川のアレ*2を思い出してしまう。この作品は見たところいちばん人気があって、常に人が集まっていた。人工皮膚、人工筋肉技術を用いて生物の声帯を模した声を発生させるこの作品は、大きさは猫の頭くらい、見た目はムーア人の睾丸のよう(いや、見たことはありませんが澁澤龍彦的イメージで)。これを握ったり揺らしたりするとおっさんくさい抑揚の「ぼえー」「うえー」というような声が出る。


GATE GATE 目玉オヤジ PCカメラわたしはこの作品をキモおもしろいと思ったのだが、一緒に行こうと誘った友人は見るなり「かわいいー!」。な、なるほどこれがキモかわいいってやつなのか? で、これに七色の段に編んだカバーとかつけて持ち歩けるようにしたら女子高生とかにウケるんじゃないか、という話になる。でもこの大きさはあんまりかわいいと思えないし、もう少し小さくしたら、あ、でもそしたら音声が甲高くなっちゃうのかな? と考えていて思い当たった。それ、鬼太郎目玉おやじじゃん!


その次にいじらせてもらったのは「SKYLIGHT」。リモコンがWiiリモコンだったので操作のコツはすぐつかめた。これ、オート機能で登録してある雲画像がランダムに取り込まれるようにして、BGV的に部屋で流しておくとかできたらまさに天窓のように使えそう。


その次の「ene-geometrix」*3もインテリア的に使えそうな作品。熱対流現象を見ることができる作品なのだけれど、シルバーの鰐皮のようになったり、皮膚の超拡大写真みたいになったり、おでん鍋の中でぎっしち詰まってくつくつ煮えてる大根みたいになったり、見ていてほんとに飽きない。この色のシックさを活かして客用ガラステーブルに仕込んで、ごくゆっくりと変化していくこの現象にいつゲストが気づくか見守りたい。


と、ここでお寺カフェの店長にひさびさに会い、ちょっと立ち話。今年ははなまつりから店長業再開との予定を聞き出す。


それからインテリアというよりお花見の際のエクステリアとしても良さそうな「Oto-Shigure」の唐傘の下に入ってみる。傘が紙じゃないと音の伝導率がどうも良くない、という。説明もされたがまさに相合傘に向くロマンチックな作品。お花見ならば、いわゆる茶店の外にあるようなもっと大きな番傘で作って見るのもいいかも。


[rakuten:book:12046636:image]そこまで見たあたりでシンポジウムが始まりそうになったので、絨毯敷きの本堂の床に座る。懐かしい感じ。シンポジウムは、かたや、個人の生の時間や領域をいかに伸張していくか、という試みをしているアーティストの福原志保+ゲオルク・トレメルに、かたや「どうせいつかみんなもわたしも素粒子になってビッグバンを待つんだから」と豪胆なことを言う細菌性粘菌のライフサイクルに魅了されている石若裕子と、生と死に関してまったく正反対の価値観の発表者が並んでいて、とてもおもしろい。


そんな発表を聞きながらわたしが考えていたのは「なるほど、自分の前世を知りたがるとかいうのも、個人ていうか『私』の生の時間を伸張したいってことなのかもしれないなあ」ということでした。過去にも「私」が生きていたと思うことができれば、未来には現在の「私」の生まれ変わりが発生する可能性を思うこともできるだろうから。


でも「私」のままで過去とか未来に生きていたくはないなあ。今生で、しかも人生80年と考えたらまだ半分も生きていないのに、思い出したら「ギャー!」となることの多い恥がいろいろあるのに、三世にもわたって「私」でいるなんて、考えただけでも空恐ろしいです。