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霊長類ヒト科アゲアシトリ属ジュウバコツツキ目の妄想多め日録

サイモン・マクバーニーの『春琴』@三軒茶屋パブリックシアター

千秋楽のマチネのチケットと有給を押さえて迎えたこの日。結果からいうと有給、取ってよかった。着いてまず、パンフレットの売り切れに驚く。


席は慌てて買ったにしてはかなりよいと言える席。一階上手側はじっこで、三味線方がほとんど見えないという困難はありましたが、なにせ舞台との距離がほんの5メートルほど! で、すり鉢の底に位置するその席から振り返ると、客席はすごい鈴なり具合。ざっと見た限りでは立ち見が60人以上はいたけど、平日でこれなら土日の立ち見も考えると、パンフレットは刷った分あっという間にはけてしまったんでしょうね。


舞台は、なめらかな餡でぎっちりと作ったとらやの羊羹*1のような濃厚さでした。小豆の粒で歯触りに変化球がある「夜の梅」とかじゃなく、黒糖でずっしりした「おもかげ」のほうみたいな感じ。一緒に供されるお茶や、羊羹のパッケージに当たる部分が、トラヤカフェ*2の品物のようにすっきりしているだけに、中身の濃さが際立ちます。


あ、この感覚ってなにかに似てるなあ、と思った上演後に思い出したのがシュヴァンクマイエルの『アリス』*3。演出も凄いけれど、凄い演出を施されてもなお負けない原作の強度を、羊羹一人一本出されたみたいな感じで思い知る、この感覚。変態と呼ばれる天才の濃い作品は、演出という新しく煎れられたお茶があったほうが、常人には飲み込みやすいのかもしれません。