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実用品としてのほとけさま~飛騨の円空@東京国立博物館



花粉が本格的に猛威を奮い始めたなか、円空展を見てきました。思っていたより点数少なめで、時系列とかでもなく、不思議な並べ方でした。入り口ではまずトーテムポールのような作品がお出迎え。特徴的な渦巻きや、簡素なものから緻密なものまで、いろいろ。おびんずるさまの「びんずる」って、こう書くのかー、とか細かな発見があります。

昔は円空仏を見ると、坂口安吾の「夜長姫と耳男」の耳男の彫る仏像が思い出されて禍々しい、呪術的な印象があって、少し苦手でした。今日の展示では、円空仏は宗教的な実用品だったのだなあという印象です。大寺院の奥に鎮座している写実的で立派な「ほとけさま」というより、日常、なでさすったり簡素なつくりのお顔に語りかけたり、目前に置いて一心に祈るよすがにしたり。

円空仏はそんな実用品だから、生涯12万体という多作でないと庶民の生活に追いつかなかったのでしょう(とはいえ、実際は円空は一人で制作していたのではなく、工房制だったのではないかとわたしも疑っている一人ですが)。

そんな、実用品としての円空仏を見てから常設展の教科書に載っているような贅をつくした美麗な仏像を見ると、信仰の対象というより美術工芸品のように見えてしまうという不思議。意匠が素晴らしいとは感じるのだけど、切実なものが感じられないのです。

常設の仏像は貴族階級のもの、ということもあるのかもしれませんが、それにしても、円空仏にネガティブな耳男イメージを持っていたわたしが、円空前と円空後で、仏像を見る目がこうも変わるとは! 実物の持つ力というのは凄いものです。気になっている方はぜひ、円空展に行かれたほうがよいと思います。

ちなみにお土産としては特製手ぬぐいなどありましたが、買って帰ったのは東京国立博物館所蔵品の見返り美人×資生堂パーラーのさくらチーズケーキと、八橋蒔絵螺鈿硯箱をレプリカにした缶入り東京会館のクッキーでした。どちらも安定のおいしさです。