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霊長類ヒト科アゲアシトリ属ジュウバコツツキ目の妄想多め日録

『Maiko ふたたびの白鳥』@恵比寿ガーデンシネマ

初っ端から泣かされる。いやー、これはズルい始まり方! しかし、シビアなバレエの世界を語るしっかりした西野麻衣子=マイコの声と、レッスン中のきっちり上がってる胸筋や横隔膜のプロな身体、舞台袖で気合入れるためにマイコが自分の太腿をぱしーんぱしーんと叩くところは、バレエの体育会系なところを表していて上手いな! というところで、その涙もすぐ乾く、と思いきや……。

なんかもう、いろいろ心揺さぶられました。女として仕事を続けること、仕事の場での誰が味方なのか敵なのかハラハラするところ、産休中の代役にキャリアを奪われるのではという怖れなどなど、子どもはいないけど思い当たる節々が痛くてたくさん泣いた。

そしてこの映画の何が魅力って、やっぱりマイコの強靭なメンタル。何度でも言いますが、ナタリー・ポートマンの『ブラック・スワン』での主役張るのにあの虚弱なメンタルって、バレエではあり得ないんですよね。あの映画を擁護してる人も、この映画を見たらそれがよくわかると思う。

同時に母と娘の物語でもあり、いかにもなたくましく厳しい大阪のオカンのキャラクターがはまりすぎて、そこでも笑ったし、泣いた。これ、お子さんと一緒にバレエ頑張ってるお母さんが見たら、目が腫れちゃいそう。あるいは、あ、うちはそこまでできないや、と悟るか。

あと、バレエダンサーとして身体が研ぎ澄まされているので、妊娠してからの変化がすごーくわかりやすいのにびっくり。だからこそ、えっ、そのお腹でこんなレッスンして大丈夫なの? と、マイコのお母さんと一緒にハラハラさせられる。

そしてハラハラといえば、ノルウェー国立オケがあんまりうまくないのにもハラハラ。東京バレエ団の伴奏ちょい上くらい? 演奏会とバレエ伴奏は別物で、前者のレベルを後者に求めてはいけないのかしら、などと思う。

ところで映画の中でノルウェー国立バレエが採用している『白鳥の湖』は、さいきんはやりのブルメイステル版ではなく、プティパ版なのですが、ロットバルトが長髪のイケメンふうで、しかも最後に王子と白鳥が踊るシーンで、白い衣装の王子と黒い衣装のロットバルトが二人で白鳥をリフト、ラストは王子と白鳥が湖に高台から身を投げ、その高台にロットバルトが登っていったんですが、ちょっと見てみたい演出の舞台です。

つまり、これってその、ロットバルトと王子とで白鳥を奪い合う演出なの? プティパ版ではロットバルト兼王子の家庭教師がやけにイケメンで、王子とのBLを連想せざるを得ない舞台もあっただけに、気になります。

そしてこの写真は映画館に飾ってあった、実際にノルウェー国立バレエでマイコの使用していた黒鳥と白鳥の衣装。細いんだけど、この中は筋肉でみっちりなんだよなあと感慨深かったです。