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バレエ鑑賞と「STAY HOME」

お題「#おうち時間」にふさわしく、ネット経由でバレエを見ることが多くなった。欧州での「Stay Home」期間中、さまざまなバレエ団が寄付を募りつつ作品をウェブで期間限定公開しているのだ。

しかし、わたしは時短勤務になったとはいえ相変わらず出勤を要する仕事なので、興味のある演目をすべて見ることができない。だが、見ることができて、その演目に時間いっぱい夢中になれれば寄付をしている。最低金額だけどね。

そこで感じたのが、やはり大手はIT投資や対応にお金を使う余裕があるみたい、ということだった。

たとえば英国ロイヤル・バレエの場合、寄付のカード決済が終わるやいなや、こちらの名前と寄付額の入ったサンキューメールが飛んできた。

かたやイングリッシュ・ナショナル・バレエ(ENB)は寄付のカード決済が終わって五日後に、こちらの名前と寄付額の入ったサンキューメールが送られてきた。こちらの名前は「Dear ◯◯」とファーストネームのみでフレンドリー、末尾にバレエのネットレッスンのお知らせ付きなのが好感が持てる。

なおこれまでに見られたものは以下です。マリインスキーは、そもそも募集していなかったみたいだけれど、寄付の仕方がわからないまま終わってしまった。

これからもまだまだバレエや舞踊のウェブ公開は続きます。こちら↓は有志の方による今後のバレエと舞踊の動画配信リスト。

hawkv.web.fc2.com

 

◆Noism『ASU』

noism.jp

すでに一度、新型コロナの余波で6月下旬に延期され、新作『春の祭典』を見られるかどうか気を揉んでいるNoismの『ASU』。2014年冬の作品だが、すでに『春の祭典』っぽいので、これをどう更新してくるのか、期待したい。

ただ、夜八時台にFAX送られてきたのには、ちょっと心配になった。スケジュール調整とかいろいろ大変かもしれないけど、そんなのメール一本でお知らせすませちゃっていいから、中の人はあんまり残業しないでくれたらと思う。

 

マリインスキー・バレエ『眠れる森の美女』

www.youtube.com

真実の恋と愛の期待と予感に慄くキミン・キムの王子も素晴らしかったけど、1h33m~1h40mあたりのヴァイオリンソロ! 間奏部分は飛ばして見ようと思っていたのに、あまりに素晴らしい演奏で、ここは飛ばせなかった!

ところでキミン・キムの演技で気付いたけど、オーロラ姫ってほとんど「慄く」ってことがないのね。『ロミオとジュリエット』とか『白鳥の湖』なら、カップル双方ともに慄きがあるキャラクターであり演技だと思うけど、オーロラ姫は錘で刺されるその一瞬だけで、あとは常に周囲に対して「良きに計らえ」なお人なわけで。自身の王家の者としての風格を疑いもしない感じで、ディズニー式のオーロラ姫とはだいぶ違うな、と思う。

それも、 オーロラ姫が生まれたのはフランソワ1世の時代 (1494~1542年)で、百年後に眠りから覚めるのがルイ14世の時代 (1638~1715年)として作劇されていることを考えれば納得。

フランソワ1世時代の15世紀終わり~16世紀半ばのフランス貴族の結婚には愛だの恋だのが介在する余地はなく、出自の古い貴族と、新たに王に認められた貴族の間では、結婚による各家の領地や財産の流出防止とか保全だとかが大問題。一方、ルイ14世時代となると、貴族にとっての結婚と恋愛とは、「結婚して落ち着いたら配偶者以外と楽しむのが恋愛」という世界だったわけで。

なので、バレエの『眠れる森の美女』で王子が姫に愛を捧げるのを見ていると、今後、価値観の相違で王子の人食い母がいなくてもひと悶着起こるのでは、いやむしろ王子が姫以外と恋愛しても、姫にとってはあまり関心がないことなのかも、とかいろいろ考えてしまう……。

 

◆ENB『ロミオとジュリエット』ヌレエフ版

www.ballet.org.uk

ヌレエフ版の『ロミオとジュリエット』。おそらく二人が一夜を共にしていない筋書き。コジョカルのジュリエットはやはり素敵! 

それにしても、最初と最後に出てきた山海塾みたいな人たちはなんだったのだろう……。ペストのメタファー? しかしペスト関係なく神父が襲われて死んだから計画がロミオに伝わらなかった話に見えたけど……。

こういう時、リアルな来日公演でパンフレットを買いたいな、と思う。

 

◆英国ロイヤル・バレエ『変身』

www.chacott-jp.com

新型コロナで「自粛警察」が徘徊するいま、見るのにふさわしい作品かもと見始めた英国ロイヤルバレエによるフランツ・カフカの『変身』。自粛警察より、隠蔽と正常性バイアスの話だった。変身後のザムザの振り付けなど、かなり伊藤潤二作品ぽさがあり、エドワード・ワトソンの驚異的な身体能力と演技力が破綻を感じさせず、とてもよい。

中盤、ラバースーツたちが出てくるところ、その手の沼に初心者を落とそうとしているみたいな。そしてあんなにプロポーションのいいラバースーツの人を見るのは初めてかもとも思った。

後半、ザムザの最後が原作通りではなかったのは、希望なのかな。円盤もありますので、興味ある方、ぜひ。

www.hmv.co.jp

 

◆おまけ:ロイヤルの『鼻』タップダンス

シュールすぎる3分ちょっとのロイヤル作品。

www.youtube.com

ベルリンにもいるらしい。

www.youtube.com