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『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX 13』

いやはや、このフィナーレには完全にノックアウト! エヴァのようにキーワードをちりばめて、見る側それぞれに違うサイズのストーリーという函を作らせるのではなく、張り巡らされてきた複線を完全に生かしきって、自分たちが作った決まった大きさの、でもなかなかそのサイズが掴みにくい函のなかへと視聴者をいつのまにか追い込んでいく手法は、見事としか言いようがない。

一話を見始めたころは、それでもわりと気軽な気持ちだった。映画の『攻殻』に漂う諦念、そしてなんといってもあの押井作品ならではの重苦しい空気感とは別物の『攻殻』、そう思っていたのに、実はこのシリーズのほうが、昭和史の事件を髣髴とさせる題材のせいで、話が進めば進むほど、隙なく電脳化社会のシリアスさが迫ってくる。

で、気づいたときにはかなり映画の『攻殻』に近い、あの閉塞感が画面に充満していた。まずそこで、やられた! と思い、ある意味大団円の最終2話で、そうした空気も、住まう人間の「智恵と勇気」で振り払っていけるのだと衝き付けられ、さらに、映画の『攻殻』ラストをトレースして、さらに「上書き」したかのような絵で終わるのに、完全にやられた、という気分だ。

そしてさらに、TVシリーズの『攻殻』、STAND ALONE COMPLEXのセカンド・シーズン制作決定が決まった。今度は押井守が制作陣にお題を投げるかたちで進むのだという。

これで当分、電脳硬化症ならぬ、攻殻愛好症から脚抜けすることはできそうにない。