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霊長類ヒト科アゲアシトリ属ジュウバコツツキ目の妄想多め日録

プーと言う名の白鳥

白鳥の湖東京文化会館

日記の日付の一週間前、期待の新星、ボッレが王子ということでそれなりに期待して行ったのですが、いろんな意味で「お笑い☆白鳥の湖」でした。オデット&オディールはとてもよかったんだけどねー。

まずお笑いだったのが、というか笑うしかなかったのが、生オケ。おーい、こんな超有名なクラシックナンバーくらい、ソツなく吹いたり弾いたりしようよ! とくに「吹いたり」のひどさが目立ってました。いきなり「アヒャ?」って感じに外れること甚だし。それと、ヴィオラかなんか大型弦楽器の位置がハープと近すぎるのか? 弓がハープの弦に当たって意味ない音を発生させるのも気になる。

つぎに王子。えっと、華がないです。つーか、それは振り付けをこなしてるだけ? 役作りは? なんかただの成金のぼんに見えるんですけど!

そして、席がいわゆる天井桟敷席だったせいなのかどうか、えーと、ダンサーたちの足音、聞こえすぎ。白鳥も逃げ出すような整然とした軍靴のような足音が、まさにその白鳥たちの足元から!

そんな要因が補完しあって、もうはじまってすぐにわたしの脳内では別ストーリー展開。まず、王子はやり手の首都圏不動産会社社長を母に持つぼんぼん。アタマのねじもゆるいが下半身もゆるい。ともだちとお笑い担当の後輩と乱パの段取りなんぞに明け暮れる日々。でもなんか虚しい。

そんなある日、就職活動中の先輩との待ち合わせにはぐれ、とりあえず席を落ち着けた母の所持するビル内の高級クラブ。なんかいつも行くピンサロやキャバクラとちがって、女の子がなかなかヤらせてくれそうにない。えっこんなにお金使ってるのに、なんで? しかし、とくにお高くとまってる感じのあのコ、どっかで見覚えがあるような、ないような…

じつはその高級クラブのナンバー1はは、不動産王子の母のむかしの夫の養女だった。白鳥は、自分の養父から土地を巻き上げた不動産王子とその母を激しく憎むように育てられていたのだった。

しかし、黒鳥となって王子を誑し込んだりしているうちに、なにも知らずに自分に夢中になっている王子のバカさ加減が哀れになってくる白鳥。かくして、養父の憎しみを解くため、白鳥はヘルプのホステスとともに身体を張って抵抗をはじめる…

まあ、これだけ楽しめたんだから、生オケの「アヒャ?」も許す。2,000円の席だったしね。ちなみに、わたしがセリフのないバレエという舞台に、こんなふうに妄想力を発揮するようになったのは、ひとえにパッケージの画像リンクが出ているAMP版『SWAN LAKE』のせいにほかなりません。

バレエに出てくる王子って、単なるヒロインの添え物で、中身が全然感じられない設定が多いのですが、この「白鳥の湖」の王子は苦悩しっぱなし。王子の境遇とそこからくる性格を掘り下げまくって描写してます。ちなみに白鳥&黒鳥は男性。つまりこの作品の主役カップルはヘテロではないのです。「バレエなんて、セリフもないし、退屈…」と思っている人に、ぜひ見てほしい。鑑賞後は、退屈なはずのクラシックバージョンの「白鳥の湖」を見直したくなるかもしれません。今回のわたしのようにね。


◆この96歳は、止めなきゃヤる気だ…

今月の雑誌『ユリイカ』より。

―ところで、毎月のようにプーが版を重ねていると伺いましたけれども、石井さんは訳書が版を重ねるたびに推敲をなさると読んだことがありますが。

石井 いえ、もうこの頃はね、出版社でそれは困るらしいんです(笑)。それでやめましたけど、前にはどうしてこう読めたんだろうって思う時があったんですよね。

―今だったら、こうするのにという感じで手直しをされるのですか。

石井 ええ。自分の本を読んでいると、どうしてもいじりたくなるものですからね、ひとつひとつ。でも今は、もう直そうとは思わなくなりました。

―(前略)決定稿に行き着いた、と思われるようになりましたか。

石井 これで完全だっていうことじゃないんですけどね、でも現実的に、いつまでも直してると、出版社をとても困らせるのね(笑)。


◆それにしても

わたしってわかりやすい。気の重いばかりの仕事を辞めてきた途端、レビュー垂れ流し!