『ミツバチのささやき [DVD]』

『10ミニッツ・オールダー』を「人生のメビウス」から観に行ったのは、『ミツバチのささやき』のビクトル・エリセが一篇を撮っていたというのが、大きい。

『ミツバチのささやき』といえば、今は無き雑誌「Olive」に、頻繁に登場した映画だ。主演の女優、アナ・トレントは本作と『カラスの飼育 [DVD]』では素晴らしい子役っぷりを見せている。ちなみに、成長してからの彼女が、シャロン・ストーンに誘惑されるマタドールのガールフレンド役で出ているのを10年ほど前に見たが、まったく華がなく、成長後のビョルン・アンドレセンを見てしまったときと同じ哀しみに襲われたものだ。

話が逸れた。で、『ミツバチのささやき』だが、この作品の子ども目線で撮られたスペインの寒村は、まるで地の果てであるかのように荒涼としている。また、大人が成長する過程で身に付ける情報処理能力を取っ払ってシーンが組み立てられているので、映画の中の世界はたいへん神秘的、かつ詩的に描かれている。その徹底ぶりは、ラストシーンにいたるまで、この子どもの世界が永遠に続くのではないかと錯覚させられるほどだ。

ちなみに同じビクトル・エリセの作品『エル・スール [DVD]』もまた、「Olive」によく登場していた。こちらは未見なので、いつの日か観てみたいと思っている。