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[乙女][読闘]『オペレッタ狸御殿』

「オペレッタ狸御殿」オリジナル・サウンドトラック
すごかった… この一言に尽きます。監督の八十二という御歳と能力が相俟って、理想の絵空事を構築するために、極楽や桃源郷を彼岸からたぐり寄せているかのような2時間弱。

出鱈目に楽しい映画なんだけど、その出鱈目さを出すためにいかに仕事がなされているか、について、見ているあいだはぜんぜん感じさせる隙を与えない、そしてこの出鱈目さにハマれないひとには拷問であろう、やりすぎに近いグラマラスなボリューム感!

まずはオープニングのタイトルバックのアニメで、その愛らしさに、というか愛らしさだけで涙が出そうに。動く清水良雄や武井武雄の、『赤い鳥』『子供之友』の挿絵のような、精緻にしてノスタルジックな童話的画面が次々展開して、その上には往年の『狸御殿』と同じ仕様で縦書き筆文字の人物紹介。

もう、ここでズキューンと胸を打ち抜かれて、それが結局、最後まで続きました。たぶん、80%はオープニング目当てでDVDを買うでしょう。

途中、清順狸だけにしかわからないんじゃないか? というカットとか、それはちょっとチャチいんじゃない? なんてシーンもあって、振り落とされそうになるんだけど、このオープニングでかけられた魔法のせいか、最後まで乗せられ、運ばれてしまった感じ。

ところでオドロキモモノキなシーンはいっぱいあるんだけど、わたしがシビれたのは由紀さおり日本語ラップのかっこよさ。あれには鳥肌立ちました。イカすぜ、SA・O・RI!

追記

しかし、見てる間ずっと、面白いし楽しいし愛らしいのに、否、そうした情動が激しいほどせつなく泣けてきて困ったのですが、こちらのレビューを読んで、「ああ、それでせつなかったのかも」と感じ入りました。
http://etica.exblog.jp/1917878