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history:storyの上位概念としての

ラ・ロシュフーコー公爵傳説 (集英社文庫)
ところで、急に自分の係累に関わる年代史のようなエピソードを[昔話]カテゴリにして書き留めはじめたのは、自分の死期を悟ったとかじゃなく、さいきんお風呂で読んでいる『ラ・ロシュフーコー公爵傳説 (集英社文庫)』のせい。
この本、年表で覚えさせられたヨーロッパ史に、フランス、という骨を一本通すことで、ひとつながりの生き物にして見せてくれます。ほかの国が背骨であれば、その生き物は、また違った姿を見せてくれるのでしょう。
その立ち上がる姿からは、histoire=historyがhi-storyであり、つまりは歴史という大きな物語とは、私的な物語が縒り合わされて形成される、その過程が見て取れます。
それにしても、ここで地方貴族の視線から描き出される、現在の洗練されたフランス、という皮のほんの一枚下には血が流れ、その背骨には、成り上がろういう地方貴族の私的な小競り合いという小骨から、政治中枢にいて、下克上許すまじとする枢機卿、互いに政治的に息を止めようと虎視眈々としている王と王妃の情報戦という大波乱という大きな骨で成っていて、という景色の生々しさには血湧き肉躍ります。教科書だけではわからない、フランスという国の成立過程を、内部告発した書とも言えるでしょう。
そして、人間って進歩しないのね、とトホホな気分になるのは、宮廷に発する「肩書き」の売り買いと、それに乗じた肩書きの乱発のくだり。これには、「時価総額」にまで通じる、きわめて今日的な錬金術の匂いが漂います。
そういえば、カリオストロ、なんていうホリエモンどころじゃない虚業家が活躍したのも、この時代じゃなかったかしらん?