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最初で最後の横浜プリンスホテル

今月末で閉鎖が決まっている、村上春樹風に言うと、「失われつつあるホテル」であるところの横浜プリンスホテルへ。

窓から見える磯子駅裏の、沖まで10艘近くのタンカーを望む根岸湾の工業地帯に、ホテル開業時の50年前は、ここもただ湾曲した砂浜が広がるばかりの景色を擁していたのだろうかと、夜明けを迎えた窓際で、ほうじ茶を飲みつつ思いを馳せる。

その工業地帯は、ホテルの薔薇園からもよく見えた。薔薇とタンカーとクレーンという組み合わせは、ミスマッチというより、もはやダダだ。こうもり傘とミシンだ。虚構船団だ(言いすぎ)。

薔薇園を見て、無計画に増築したとしか思えない温室で迷い、貴賓館などを見て部屋に戻ると、廊下から、貴賓館の頭頂部と、その手前の草ぼうぼうの建物屋上が見えた。その屋上は、入れるようになっていたので、おそらくここも、屋上庭園などにするつもりで盛り土をしたのであろう。

確実に気温が上がっているのを、薔薇園から戻って入ったホテルの冷房で実感してからチェックアウト、ウッドデッキと芝生を踏みに、大さん橋へ。桜木町で、ネイルサロンとカフェが旧い建築物に同居している店舗で昼食。これが、いろんなおかずがすこしずつというのはもちろん、味付けが、見た目の予想をほんの少しずつ裏切りつつも(ゆず風味のおからとか!)、すべておいしく満足。

それから歩いて山下公園へ。そして、大さん橋へ。相変わらず、芝生の斜面を子どもが転がり落ちながら笑いさざめいていた。が、もしかしてここは、犬のドレスコードがあるのやもしれぬ。大さん橋で見かけた犬は、9割がお洋服をお召しであったのだ。また、大さん橋を出てきてすぐのオープンカフェで、アイスミントティを飲んでいるときに、大さん橋に向かう犬の9割もまた、お洋服をお召しであった。

ところで、今日は大さん橋に巨大客船が停泊していて、それが出港するのを見られたのが面白かった。

まず、大さん橋に近づくにつれ、それを3分の2ほども見えなくするほどの巨大客船が見え始め、大さん橋と船がつながっているのをはじめて見、それから客船から大さん橋がわへ投げられるたくさんのテープを見、そして最後に、デッキで楽団が演奏するなか、汽笛とともに出港、千切れながら舞うテープを見たのだ。

なるほど、客船ターミナルとは、このように使うものであったのだなあ。