読んだり食べたり書き付けたり

霊長類ヒト科アゲアシトリ属ジュウバコツツキ目の妄想多め日録

『ヴァニシングポイント』

ヴァニシングポイント
31歳ガン漂流』は、読んでいた。しかし、こちらは手付かずだった。なぜかといえば、若くして恋人、いとこ、友人に死なれて来た身には、自分と同年代の著者の、若死にがテーマの小説はキツすぎる、という予感があったからだ。そういう意味では『31歳ガン漂流』もそうとうツラく、続編たる『32歳ガン漂流 エヴォリューション』はいまだに読めてはいない。

しかし、友人の本棚のなかで、この本のコピー、「イレッサに比べりゃエクスタシーだって安上がり。ガン患者は麻薬中毒より金がかかる。」に、なぜか強烈に引き付けられて、というか、抗うことが出来ず手に取り、そして一気に読み終えた。途中で読むことをやめられなかった。ページから、すごい風圧でなにかがあがってきて、閉じることが、できなかったのだ。

この風圧は、わたしが本書と同じ時期に新宿のクラブを徘徊していたという同時代性からなのか、それとも、こうした環境に無関係な読者も共有しうるものなのか、わたしには区別できない。後者に属する読者には、もしかしたら、もっとずっと強烈な風が吹き付ける小説かもしれない。

読み終えた今はただ、この才能が、もう新たな作品を生み出さないことが、悔しい。