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霊長類ヒト科アゲアシトリ属ジュウバコツツキ目の妄想多め日録

『「精神分析的子ども」の誕生―フロイト主義と教育言説』

「心理学的に解釈可能な子ども」という枠組みがどのように規定されてきたのかを、フロイトのトラウマとリビドー説の誕生過程とその後の理論の変転にまで遡り、さらに教育の分野にその理論がどのように敷衍されてきたかが、まず導入部分で丁寧に叙述される。

おもしろいのはこの部分を読み進むうちに、フロイトが子どものトラウマ説の原因に対しての態度を変える部分と、それについてのフロイト以後の恣意的な、ほとんど捏造に近い取り扱いが、ユダヤ教−原始キリスト教カトリックの図式に酷似していると思えてくる点。さらに、フロイトの遺志に反して出版されてしまい、エディプス・コンプレックスと幼児性欲説を教義とする正統派フロイト右派の聖典である書簡集をめぐる1980年代の事態は、洞窟文書の発見とその衝撃のようにドラマティックだ。

残念なのは、大部な著作であり論文の書籍化である以上しかたがないとはいえ、手元に買いおくには高額なこと。大学図書館などで繰り返し借りてくるには500ページ近くと重いし…