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『グレゴリー・コルベール ashes and snow ノマディック美術館』@お台場

お台場でグレゴリー・コルベールの写真と映像を見る。


展示されているのはアフリカやオセアニアの神話や民話の一場面のような、人と野生動物が写真のテーマのセピアカラー作品、しかもかなりの大判。ものによっては子供や象の頭部が実物大で、通路の両側から迫ってくるので、そういう風景を見ている、というより、その風景のなかに自分がいるような錯覚を起こしそうにもなる。会場の微妙な暑さと薄暗さがまた、東南アジアのジャングルを思わせ、作品との親和性を増す。


写真作品はすべて手漉き和紙に刷り込んであるのだが、肉食大型獣と人が接近して座っているという非現実的な光景などは、ふつうの印画紙の紙質だとCGっぽくなってしまうか、妙に生っぽくなって作品の神話的な雰囲気が壊れる恐れがあるのではないかと思う。


かといって和紙じゃないほかの国の手漉き紙では、写真をプリントしてOKな表面の均一さとかが得られなさそう。展示写真は今後新作が足されていくとのことなので、安定的な供給(品質込みで)が期待できる和紙をチョイスしたのだろう。



しかしこの展覧会、作品は素晴らしいと思うのだが、展示方法に関していろいろと詰めが甘い。


前述のように作品はどれもかなり大きく、それだけに和紙にプリントされることで被写体にまとわりつく埃や砂粒、湿気などが映し込まれていて秀逸なのに、いくつかの作品は吊るすテンションのかかり具合と照明のせいで、作品と無関係な妙な皺とその陰影が作品に寄ってしまっている。


映像に関しては、会場のどこにいても微妙に混ざり合う3つのスクリーンの音声(しかも言語の輪郭がぼやけるなど音質があまりよくない)が、コンテナを積み上げて作られた会場の、作品の舞台を思わせる暑さとあいまって眠気を誘う。3つとも、息を詰めるようにして集中して見たいタイプの作品なので、とても残念。


とくに、3つの中で一番上映時間の長い60分の映像作品は、水の中で人と象、人と水棲哺乳動物たち、そして、天国から追放され、地上に落ちてくる堕天使のように人と人が微妙な緊張感を保ちつつ触れ合いつづける場面などがあり、他2作品の音声に邪魔されずに大画面に没入して見たかった(ちなみにこの60分の映像はこちらのDVDに収められているものだと思われます)。


とはいえそうした展示方法の残念な面にもかかわらず、作品のすばらしさは損なわれていない。お台場では今月24日(日)までの開催。その後のノマディック美術館(この美術館自体も『ashes and snow』のために設計・施工されたもの)の解体を見てみたい。


以下に「ashes and snow」でヒットしたようつべ画像いくつか。