『東京右往左往―TOKYO GOING THIS WAY AND THAT』
東京で幼少期〜ものごころつくまでを過ごして、あんまり東京の観光名所とかに興味がなくなってしまう、という人は少なくないのではないでしょうか。かくいうわたしがそのクチです。
興味がなくなってしまう、というのはちょっと違うかもしれません。好奇心をかきたてられなくなってしまう、というほうが、近いのかも。都内、というだけで自分の生活圏内のように思えて、食指がうごかなくなってしまう、というか。
でも、タモリ倶楽部なんかで「大江戸市中引き回し経路を辿る企画」なんかがあると、それはそれでおもしろい。映っているのが普段通勤している場所であっても、生活圏を見るのとは別の視点が導入されているからですね。
で、この本、『東京右往左往―TOKYO GOING THIS WAY AND THAT』です。基本的にはアマゾンの説明文にあるとおり。ほとんどは観光地どころか、商店街だとか川っぺり。完全「生活圏」内です。
しかし、この本でリポーターとイラストレーターの視点が入るとそこはたちまち、しょぼい場所なのに面白い=しょぼいネタなのに面白い、というタモリ倶楽部的な味わいを放ち始めます。そう、あくまでもタモリ倶楽部的。アド街ック的、ではなく。
トマソンで名を馳せた赤瀬川原平や、稠密な描き込みルポの妹尾河童なんかがお好きな方にも、きっとたまらない世界でしょう(そういえば妹尾河童もトカレフの仕組みについても稠密なイラストレポ描いてたから、稠密な描きこみを行う、という点以外でもモリナガヨウと相通ずる部分があるのかもしれません)。【東京ヘンな場所、怪しい所】なんて項目もあるしね。あ、あと押井守の都市論や都市描写に惹かれる方にもおすすめ。わたしが激しく共感もしくは笑えたのは、以下の5本です。
「春のうららの…」
夏蒲田!
踏破!世田谷緑道
夢の地底ハイキング
多摩川土手歩き
ちなみにNG集みたいな「小ネタ全員集合」なんて項目もあります。しかも数回にわたって!