収録されている最初のほうの「エレクションテスト」「死刑長寿」あたりはシニカルな笑いを共有できるのだけど、それからあとは、一篇読むごとにぞくっとさせられる。
そのうちわけは、過去の記憶が溶け合う老人の頭の中を描き出したらこうなるのか、という不安だとか、フツーの人が殺人を趣味にする過程のあまりにも普通に思える描写ぶり。
筒井康隆がどう書いても行間から陽の気が漏れているように感じられるのと正対するかのように、こちらは陰の気が読むほどに沁み出して来るような。
それが計算なのか、ある意味での老人力の成せるワザなのか。図りがたいところに、またぞくぞくっとさせられる。