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霊長類ヒト科アゲアシトリ属ジュウバコツツキ目の妄想多め日録

『道』と『ベルリン・天使の詩』

  道 [DVD]  ベルリン・天使の詩 [DVD]

レビューっていうより鑑賞後の思い付き〜妄想メモ。


自分に起きたことでもないのに理不尽さに打ちのめされる。特典の淀川さんの解説でようやく作品の外へ這い出てきた感じ。誰が見ても打ちのめされるかどうかはわからないけれど、生理現象のように涙を流させるようなカタルシスを伴わない映画の重力を味わえる作品だと思う。


ところで淀川さんの解説を聞いているうちにわたしの頭の中にみるみる拡がったのは『ベルリン・天使の詩 [DVD]』だった。『ベルリン 天使の詩』はまるで『道 [DVD]』をネガとして焼かれた映画のようだ。


ヒロインはかたや何のスキルも華もない無垢な女(ジェルソミーナ)、かたやそれなりに世間を渡っているらしきサーカスの花形ブランコ乗り。舞台はどちらも旅芸人(サーカス)の世界ながら、かたや中世の説教書の版画挿絵のような煉獄じみた地上ばかり、かたや平安だけは保証される天使のモノクロ世界からカラーの人間界へ。


いろいろ考えているうちに、『ベルリン 天使の詩』は『道』の重さをしっかり受け止めたヴェンダースに起きた反作用で作られたような気が、すごくしてきた。