読んだり食べたり書き付けたり

霊長類ヒト科アゲアシトリ属ジュウバコツツキ目の妄想多め日録

追悼 池内紀さん

“ユダヤ人”という存在 (池内紀の仕事場 2)

“ユダヤ人”という存在 (池内紀の仕事場 2)

 

 

いま、『〈ユダヤ人〉という存在 』を少しずつ読んでいる。一昨日、神保町の古書店の店頭で見たその著者の池内紀さんの「追悼コーナー」を、にわかには信じられず。調べたら本当だった。

 

 

寂しい気持ちではあるけれど、そういえば池内紀さん、数多ある著書のどこかで「七十七歳で死ぬことにしている」と書いていたのを思い出す。 五十五歳で東大を早期退職したのも、辞めないと死ぬまでにカフカの全作品翻訳ができないからという理由だったのだろうか。

 

変身ほか (カフカ小説全集)

変身ほか (カフカ小説全集)

 

 

と、思ったら記憶というのはあてにならないもので、池内紀さんが「七十七歳で死ぬ」と決めたのは七十歳の時だったそう。その頃のお仕事で書かれていたのを読んだわたしの脳内で、記憶の捏造が行われたのだろう。

 

www.chunichi.co.jp

定年後は、そのカフカの翻訳はもとより、ドイツ文学者の範にはおさまらない山歩きや温泉のエッセイで、広範な読者を得た池内紀さん。翻訳のお仕事では『香水』が記憶に新しい。といっても、ハードカバーで三十一年も前なのか!

 

ある人殺しの物語 香水 (文春文庫)

ある人殺しの物語 香水 (文春文庫)

 

 

いまごろ、 「七十七歳の予定が、一年ずれ込んじゃったなあ」と呟きながら、ゲーテ種村季弘と地獄で温泉につかっているのかもしれない。

 

www.amazon.co.jp

中学生くらいからこのかた、愉しい読書の時間をありがとうございました。‬まだまだ読み切れていない池内紀さんのご本を、これからも読みながら、愉しく老いていきたいものです。

 

記憶の海辺 ― 一つの同時代史 ―

記憶の海辺 ― 一つの同時代史 ―