追悼 池内紀さん
いま、『〈ユダヤ人〉という存在 』を少しずつ読んでいる。一昨日、神保町の古書店の店頭で見たその著者の池内紀さんの「追悼コーナー」を、にわかには信じられず。調べたら本当だった。
亡くなる五日前までお仕事されていたのか。すると例のヒトラー本の正誤表も、ご自身での仕事だったのだろうな。会社員だとそうはいかないかもしれないが、ボランティアの仕事などではわたしもかくありたい。 https://t.co/hU6cbaqGrQ
— Mmc (@chevre) September 6, 2019
寂しい気持ちではあるけれど、そういえば池内紀さん、数多ある著書のどこかで「七十七歳で死ぬことにしている」と書いていたのを思い出す。 五十五歳で東大を早期退職したのも、辞めないと死ぬまでにカフカの全作品翻訳ができないからという理由だったのだろうか。
と、思ったら記憶というのはあてにならないもので、池内紀さんが「七十七歳で死ぬ」と決めたのは七十歳の時だったそう。その頃のお仕事で書かれていたのを読んだわたしの脳内で、記憶の捏造が行われたのだろう。
定年後は、そのカフカの翻訳はもとより、ドイツ文学者の範にはおさまらない山歩きや温泉のエッセイで、広範な読者を得た池内紀さん。翻訳のお仕事では『香水』が記憶に新しい。といっても、ハードカバーで三十一年も前なのか!
- 作者: パトリックジュースキント,Patrick S¨uskind,池内紀
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2003/06/10
- メディア: 文庫
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いまごろ、 「七十七歳の予定が、一年ずれ込んじゃったなあ」と呟きながら、ゲーテや種村季弘と地獄で温泉につかっているのかもしれない。
中学生くらいからこのかた、愉しい読書の時間をありがとうございました。まだまだ読み切れていない池内紀さんのご本を、これからも読みながら、愉しく老いていきたいものです。