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霊長類ヒト科アゲアシトリ属ジュウバコツツキ目の妄想多め日録

中東とSF

◆彼女には、あれが新しく見えるのか…

日本でテロが起こっていない幸運に感謝したくなる。

http://www.sankei.co.jp/news/040429/sha005.htm

さて、某朝日紙で上野千鶴子氏が「今回の件で『戦争』の歴史に新しい一ページが加わった。テロリストが敵対する国家と言う政治主体と、そこの国民を切り離して判断したということだ」と言うような意味のことを、自衛隊派遣への反対意見を織り交ぜて一大発見かのように語ってましたが、あまりに紙面に同化した意見ですごいと思わされました。

アホか。「テロリストが敵対する国家と言う政治主体と、そこの国民を切り離して判断した」ということが、族長集合体で、いまや国家の体を為していないイラクの人間にとって、西洋的な「戦争の歴史」の新しい一ページなんぞであるものか。その後のイタリア国民へのデモ要請を見ればわかるように、国家と国民、どっちが御しやすいかを砂漠の民ならではの嗅覚で選び取ってるだけで、むしろ前近代的な交渉態度に後退しているとしか思えない。

「戦争の歴史」の上での態度の進化ということならば、以前にべらじおさんが触れていたように、日本政府の交渉力がややレベルアップしたという点をもっと考えてもいいと思う。とはいえ、今回の見返りに、イラク人に主権が移譲されてから、またぞろ戦後復興やらODAやらで、何十億と強請りとられるのはほぼ確実だろうけど。

リンクした先みたいな事態がやすやすと起こせる東京でイスラム系テロが起こらない理由も、その点から考えると腑に落ちる。近い将来、金の卵を産む鶏を傷めつけちゃあ、意味ないものね。


◆こっちも買うでしょ

SF Japan vol.9』(ISBN:4197202318)。『イノセンス』に先立つSF小説の世界を、電脳、犬、恋愛、人形、ミステリーの要素から紹介したり、SF作家やミステリ作家が短編を書き下ろしたりと、文化祭みたいな楽しい一冊。

そのなかで、人工知能をめぐる小説に、わかつきめぐみがイラストをつけているのを見て、はっとする。まるで、もういないあの人の世界そのものだったから。

SFをちゃんと「読む」のは久々なので、ゆっくり楽しめそう。