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『不肖・宮嶋ちょっと戦争ボケ〈下〉1996〜1999』

不肖・宮嶋ちょっと戦争ボケ〈下〉1996~1999 (新潮文庫)
ついこないだの「不肖・宮嶋=ルパン」自説はこの下巻、『不肖・宮嶋ちょっと戦争ボケ〈下〉1996~1999 (新潮文庫)』を読みはじめてすぐ、16ページ目で立証された! なんせ不肖・宮嶋自らこう語っているのである。

フライデー*1時代は(中略)、潜入の天才(当時、宮嶋に潜入できない建物は東京にはないといわれていた)と呼ばれていた私である。

それにしても上下巻通して読了し、感じるのは、評価のあまりの少なさ、というかむしろ「平和ボケ」市民団体や政治家、ニュースキャスターからの非難・排斥活動に反比例するがごとく、黙々とキツい平和的国際貢献活動に打ち込む自衛隊への敬意である。
順に拾っていくと、ペルシャ湾における湾岸戦争の後始末(掃海艇による機雷除去)、治安という概念ぶっ飛ぶ(本書で不肖曰く「夜出歩くやつは、殺されてもいいやつ」)、また「未知の寄生虫が生息しており、裸足の爪の隙間から人体に浸入してくる」地、ルワンダへの国際緊急援助隊活動、トルコ大震災被災民のため、神戸復興後用済みの仮設住宅500戸を運ぶ27日間無寄港便などがそれだ。
とはいえやはり、自衛隊がらみ以外の単独行でのほうが、不肖・宮嶋のスリルをユーモラスに語る筆致は冴えている。上巻での、クロアチアからサラエボへの「現地では無理といわれていた」複雑怪奇な民族・国際機関間のナワバリを縫って、時間制限ぎりぎり、しかも穴開きガソリンタンクのプジョーによる決死の脱出行は出色!

*1:写真週刊誌『フライデー』のこと