すべては珠の糸のように
13巻は12巻より続く緊張がさらに高まり、一気に読むことはとても出来なかった。一章ごとに本を置いて一休みしつつようやく読了。この緊張感、そして読了の際の開放感によるカタルシスは、今まで類似の感情を味わったことのないものだ。敏感な人ならチャクラが開いてしまうのではないか、というこの快感は、どのような言葉でも伝えうるものではない。最終巻まで読み進んできたこのときに、全てが1巻から繋がっていたというミラクルに、琴線が掻き鳴らされた。
さて、13巻では、晴明が国家の容れ物を、身を尽くし、魂魄を尽くして(まさに生死を賭して!)とうとう完成させるが、自動機械ならぬ人間が運営するこの容れ物は、貴族=官僚がそのデザインに込められた志と意図を酌み取って動かさなければ、意味をなさない。ここではそれは、言わずとしれた源博雅と、トボけているように見えて奥の深い人物・藤原兼家*1によって実現されることが示される。
このような切り取り方は魔術的な本作に対して生硬かもしれないが、今、この作品が完成し読むことが出来るわたしたちの世界においては、晴明のように国家に愛を込めて産み落とそうという気概と能力のある人物が、いないということの寂寥を、わたしはひしひしと感じる*2。
ただ言う。関心のある方は、どうぞ1巻から順にお読みください。これからこの作品に出会うひとが、わたしは、心底、羨ましい!