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霊長類ヒト科アゲアシトリ属ジュウバコツツキ目の妄想多め日録

『パビリオン山椒魚』

パビリオン山椒魚 オリジナル・サウンドトラック
出鱈目な話、とは宣伝段階からあちこちで目にしてはいたけれど、ここまで出鱈目とは… というか、出鱈目なのはストーリーだけではなく、映画そのものでした。

今ここに居ない娘に話しかける母のシークエンスで物語が展開し始め、今ここに居ない母に話しかける娘のシークエンスで終わるこの出鱈目な映画は、もしかすると年経て妖力を身につけた山椒魚のキンジローの見る夢の世界という設定だったのかもしれません。

さて、この映画がどのように出鱈目かといえば、各エピソードがぎりぎりで繋がっているかと思えば、次の場面では繋がっていなかったりと、疲れたときに見る夢を目覚めて思い出そうとしているかのような映画であり、かと思えば南米の死んだ親族が普通に生き返って徘徊する土着的にマジカルな物語のように生き生きと荒唐無稽であり、あるいは白水uブックスあたり(『最後の物たちの国で』や『さくらんぼの性は』など)の奇想天外さであり。ノベライズがそんな感じのものであるといいなあ。
パビリオン山椒魚

ちなみにサントラというよりは、まるで菊地成孔ソロ作品のようなCDを先に聞いていて、それがどう使われているかの検証も兼ねての鑑賞でしたが、すべての楽曲が浮かずにきっちりサントラとして機能していました。

サントラCDのブックレットで、監督がいかに菊地ファンであるかが縷々語られていたので、悪目立ちしているんじゃないかと勝手に危惧していたのですが、杞憂でした。悪目立ちという意味では、眠りの中から引っ張り上げた途端、見る見る乾涸びていく夢を、乾いて散り散りにならないようにずぶ濡れにして差し出しているような、この映画のほとんどすべてのシークエンスが悪目立ちしていたので。

そんなわけで、副音声で見直す余力は、残っておらず、返却してしまったことが悔やまれます。