2018年に見た映画
映画館に見に行こうと思って行けなかった作品がけっこうあった気もしますが、まずはベスト10を。
❶『パッドマン 5億人の女性を救った男』
インド映画に必須といわれる九つの要素をしっかり活かしつつ、発明家の理解されなさと孤独、焦燥がじりじりと迫ってくる作品。2018年最後に見たこの映画が、2018年ベストでした。わたしにとっては2018年のインド映画は『バーフバリ』より『パッドマン』!
❷アクラム ・カーン版『ジゼル』
舞台の映像化は映画にカウントしないことにしているのですが、この作品はバレエと演劇、舞台と映画という垣根を超えて、クラシックバレエ『ジゼル』の骨組みだけ取り出して、いま現在の世界で肉付けして見せた傑作なので。
一月五日から東劇で再上映されるので、さっそくチケットを取りました。
❸実写版『人狼』
原作のアニメ版とは陰と陽のベクトルが反対、なのに執拗にアニメ版の情景を実写化しているところに重篤なオタク気質を感じざるを得ない。ベクトルの違いのほか、時代背景の置き換えがなんといっても秀逸で、今しか作れない鮮度の高い作品。
❹『ファントム・スレッド』
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❺『ドリーム』
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❻『ペンタゴン・ペーパーズ』
『グランド・ブダペスト・ホテル』の監督が撮ったコマ撮りアニメ。
砂糖菓子のように美しい描写のホテルを舞台に戦争と難民を描く『グランド・ブダペスト・ホテル』も、素晴らしいので、ぜひ。
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❾『ダンシング・ベートーヴェン』
ほかに『パディントン2』『デッドプール 2』『大人のためのグリム童話』『ゴッホ 最期の手紙』が記憶に残っています。なお、今年最初の映画はアクラム・カーン版『ジゼル』の再見になると思いきや、映画館では公開されなかった"Goodbye Christopher Robin"(グッバイ・クリストファー・ロビン | 20th Century Fox JP)のネット視聴でした。これについてはまた後日。
映画館に行けなくて残念だったのは、『タクシー運転手』『万引き家族』『カメラを止めるな!』『クレイジー・リッチ!』『スリー・ビルボード』『シェイプ・オブ・ウォーター』『The beguiled/欲望のめざめ』あたり。夫の人は映画館でコンビニ袋の音がしたりするのをとても嫌っていて、さいきんはNetflix配信のドラマや映画に傾倒していますが、わたしはやっぱり大画面で見るべき作品はまだあると思うのです。
レッスン覚え書き・2018年末編
今日が今年最後のレッスン日でした。後半は「バレエのレッスンのためにどう時間をやりくりするか?」という感じだった2018年。ささやかながらできるようになったこと、わかったことなどをメモしていきます。
◆できるようになったこと
(1)まっすぐ立った状態で、骨盤を倒して手で床に触れるようになった。
いや、ふつうに身体が硬くない人なら「え?」という話だと思いますが、小学生くらいから即位体前屈でマイナス計測続きだったわたしには、「身体って変わるんだ!」という驚きの出来事でした。
きっかけは先生の、「ウエストから背中を倒すんじゃなく、骨盤を前に回転させるように倒〜す!」の一言。そしてクラス全員でそれをやっているときに、回って来た先生が骨盤を後ろから掴んで前に回転させてくれたときから、前屈して手が床に着く感覚がわかるようになりました。いやー、びっくり。なるほど、そういうことだったのか!
(2)「脚は足の付け根からじゃなく、鳩尾から始まっている」ことが、筋肉を自覚することで頭ではわかるようになった。
「脚を動かすときにどこから動かす?」という質問で脚の付け根では? と答えたら、「いいえ、鳩尾からです」と言われ、それからしばらくはそれがどういうことなのかまったく体得も想像もできなかったのですが、何回かあとのレッスンで突然、その筋肉が自分にもあることを自覚。
具体的には、鼠蹊部から丹田を通り、おへそに向かって走っている筋肉が、自分にもあることがわかったのです。それは、この筋肉を使うことで、バレエ的に片脚で立つときの安定がはかることを体得する過程でのこと。
とはいえ、鳩尾から動いているように脚が横や後ろや上に45度以上、上がってくれるのはまだまだ先のようです。
◆わかったこと
(1)爪先立ちのバランスが出来ていたのは、バランスというより身体に力が入っていたからだった。
これはけっこうショックでした。しかも骨盤の高さが揃っていないので、真にバランスが取れている姿勢とも言いがたい……。
(2)常にどの超初心者クラスでも一番出来ない子。
これまで正直、どこに行ってもそこそこ出来る・こなせる人扱いだったので、レッスンのたびに毎回、「自分がいちばん身体が硬い」「自分がいちばん動きを覚えるのが遅い」という絶望的な事実にうなだれています。
特にバーを離れてのフロアレッスンでは、身体の硬さに加え、先生が一回やって見せて言葉で説明した動きをみなさんがスイスイやっているのに、わたしは覚えられずドタバタ。パ・ド・シャ(猫のような跳躍)も、わたしの場合、筋肉が出来てなくて跳躍の高さがなくて脚が伸びないのもあり、蛙のようです。うう……。
(3)合わないマッサージ師はさっさと切る!
12月は半月ほどバレエのレッスンに行けなかったのですが、その大きな理由が合わないマッサージ師に4~5回、連続でかかってしまったこと。職場の近くにあるのが便利なマッサージ屋さんで、土日だけ来ているという新顔の施術師に、初回に脚の長さをそろえられたので信用してしまったのですが、その後、施術は痛くてつらいわりには施術師が言うようには一向に身体がやわらかくならない。なんなら翌日、身体中痛くなるときも。
「これはダメだ」と思った決定的な要因は、「翌日か翌々日の休みにバレエのレッスンに行けるといいなあ」と話しながら十二月二十二日に施術を受けたのに、二十三日も二十四日も腰を中心に身体中が痛くて寝込んでしまい、バレエのレッスンどころじゃなくなったこと。二十五日に別のマッサージを受けて、ようやくまともに仕事ができるほどでした。
というわけで二十二日に「経過を見たいから来週も来てくださいね」と言われましたが、今日は行かずにバレエのレッスンに行き、別のマッサージを受けて帰宅。今は身体中痛いこともなく、プロの身体の可動域に驚嘆しつつ、無駄にした半月と施術代にため息をついているところです。
さいきん見たバレエ関連映画四本
腰が治らずバレエのレッスンに行けていないので、自然と(?)映画を見る回数が増えていました。しかも、バレエ関連映画ばっかり。
『マチルダ 禁断の恋』@恵比寿ガーデンシネマ
「仕掛けられた恋」「ロシア最大のスキャンダル」とかいう宣伝コピーに、マチルダは実は峰不二子かマタ・ハリ的な存在だった、的な「ロシア最大の【政治】スキャンダル」映画かと期待したのですが、うーん、史実を離れたNHK大河ドラマ並みの、単なる道ならぬ恋愛ものでした。あの国のトップが絡むスキャンダルというとそういう方向でしょ? と期待してしまうのは、共産党ソ連とプーチンのロシアに毒されすぎでしょうか?
バレエのシーンも思ったより少ないし。バレエの衣装は最初、時代考証しっかりし過ぎで野暮ったいなあと思っていたら、終盤、え、なにそれLED? 少なくとも豆電球と電池ないと無理ですよね? という時代を超越した衣装が現れてびっくり。宮殿内部とか戴冠式再現シーンを見られたのはよかったかな。
あ、あとストーカーこわい! めっちゃこわい!!
『ロイヤルバレエ マイヤリンク』@シアタス調布
調布で英ロイヤルバレエの『マイヤリンク「うたかたの恋」』。昨夜の時点でウェブでチケットの売れ行きを見たら全然で、貸切か? と思いましたが、15人くらい客席は埋まっていました。マクレイ復帰作だし、無茶苦茶難易度の高いパ・ドゥ・ドゥだらけだし、平日でも見たい人はそこそこいた模様。
内容は、こんなマクレイも見たことないし、サラ・ラムはムンクの「思春期」を思わせるダークネス全開のファム・ファタールぶりだし、この二人しか踊れなさそうなこんな大変そうな演目も見たことないし、とにかく、素晴らしかったです。見てよかった! 東京では13日までの上映でした。
イングリッシュナショナルバレエ(ENB)アクラム・カーン版『ジゼル』@東劇
アクラム・カーンのジゼル、ウィリたちがゾンビっぽくて最高。バレエ好きより演劇好きの血が騒ぎました。
流浪の民とかオレンジ・イズ・ニューブラックとかまどかマギカとかいろんなものを思い出すけど、たしかにこれは今様ジゼルだと思える。
現実世界で難破した難民船から浜辺に打ち上げられたあの子どもは、アクラム・カーン版のジゼルとアルブレヒトの子だったかもしれない、という妄想に至ったり。
原型を完全に霧のかなたに追いやっている音楽も、ノイズミュージックや民族音楽が好きなわたしには大好物です。ああ、生で見たかったなあ。香港公演には来たようですが、日本には来なかったのですよね。こういうところに日本の凋落が少しずつあらわれている気がします。
『くるみ割り人形と秘密の王国』@TOHOシネマズ上野
映画『くるみ割り人形と秘密の王国』、堀越英美さん翻訳の『世界と科学を変えた52人の女性たち』を読書中なのもあり、「お、お母さんは放射性物質かなにかのご専門で?」とsuspectしてしまった。映画はまさにディズニー、というか、子ども向けでした。大人としてはいろいろモヤモヤ。
母ともどもリケジョであるクララのそのリケジョであるがゆえの時代的困難が描写されないので、単に物語でデコレーションとして採用してみただけなのね、とがっかり。クララの母が短命なのはもしや研究対象が同位体?とか考えてたのに。
ドロッセルマイヤーとくるみ割り人形が昨今の趨勢で黒人キャスティングなら、クララが帰還したらドロッセルマイヤーの甥としてくるみ割り人形の彼が登場するのかと思ったら、しなくてがっかり。
それでもチャイコフスキーのスコアはやっぱり偉大です。ドゥダメル指揮とのことだけど、チャイコフスキーのスコアだけならアルバム買おうかな。
ドゥダメル指揮!ディズニー最新作『くるみ割り人形と秘密の王国』オリジナル・サウンドトラック11/21発売! - グスターボ・ドゥダメル
わたしの髪の毛は分厚い、という話
ここ半月、腰の調子が治らない。先日の休みもバレエのレッスンをするのは無理そうだったのであきらめて、前日に予約して久々に髪の厚さを減らしに行きました。パーマ液とかヘアカラーで頭皮に痒みが出るようになって、それらをしなくなって10年、その前もその最中もその後も、髪の毛の生えてる密度、高い。密林並みに濃い。
そんなわたしの髪の厚さを減らしに行くサインは、クリップだけでは髪が留められなくなったとき。なお髪が厚くなりすぎてバレッタを壊したことも……。
最近はシニヨンにしたあとスクリュー状のピンでシニヨン内部を留めてからじゃないとクリップで留められない量でした。ちなみにクリップは5個使用。
今回も1時間ほどでバッサバッサと減らしてもらいました。担当さんが最後にブローしながら、「相変わらずサラッサラですね! 厚いけど!」と満面の笑みで言ってた。
そうなんですよ、厚くさえなければ髪は丈夫だし変な癖もないし、いいんだけど。いや、よくないな、サラサラすぎて、髪が厚くないときはヘアゴムで結んだ上からじゃないと、バレッタが落ちるんだった。うーむ。
世界人権デー・ピースマーチ@神田~秋葉原
12月8日(土)、10日の世界人権デーを前に主催 スチューデント・フォー・フリー・チベット・ジャパン(SFTJ) 、共催 在日チベット人コミュニティー、協力 世界南モンゴル会議(クリルタイ)、在日東トルキスタン人会で行ったピースマーチの様子をお知らせします。
今日、12月8日は世界人権デー70周年のピースマーチを行います。14:00 中央区常盤公園で集会開始で14:30 行進スタート、15:30 上野公園て解散予定。集合場所の常盤公園はこちら。
— SFTJapan (@SFTJapan) December 8, 2018
〒103-0021 東京都中央区日本橋本石町4丁目4−3https://t.co/Qhq4kcQr2B
まずは午前中に、東京・麻布の中国大使館前で行ったチベット、ウイグル、南モンゴルの人権状況の改善を訴える抗議行動の模様をどうぞ。
午後は中央区日本橋本石町4の常盤公園(近くに工事中の常盤橋公園があってまぎらわしい!)に午後二時に集合、二時半に常盤公園を出発し、秋葉原を経由して昌平小学校わきの芳林公園をゴールに午後三時半ごろ解散しました。
https://twitter.com/SFTJapan/status/1071240090108588037
参加のみなさん、沿道で賛同してくださったみなさん、目を止めてくださったみなさん、ありがとうございます。最近ウイグルの惨状が報道で伝えられているとおり、中国政府による市民への弾圧はとどまるところを知りません。中国政府が何をしているのか、世界で何が起こっているのか、関心を持っていただければ幸いです。
アクラム・カーンの『ジゼル』@東劇
イングリッシュ・ナショナル・バレエ(ENB)団による、振付家アクラム・カーンによるまったく新しい『ジゼル』の映像版を東銀座の東劇で見てきました。東劇での上映期間は11月30日~12月6日、間をおいて12月14日~21日なのですが、その前半期間に滑り込みで。
音楽のせいかバレエ魂より演劇魂を揺さぶられる映像体験です。オペラ版の『カルメン』に、歌曲「流浪の民」、ネットフリックスの女子刑務所ドラマ『オレンジ・イズ・ニューブラック』、アニメ『まどかマギカ』とかいろんなものを思い出すけど、たしかにこれは今様ジゼルだと思えます。ウィリたちがゾンビっぽくて怖くて、アマゾネスを思わせる強さなのも最高。ウィリたちの女王・ミルタは闘いの女神・ヴァルキューレのようでもあります。
そして、現実世界で、難破した難民船から浜辺に打ち上げられたあの子どもは、アクラム・カーン版のジゼルとアルブレヒトの子だったかもしれない、という妄想に至ったり。
ビジュアルとしては、権力者側の女性のドレス、特に白くて横に嵩張ってるまどかマギカの魔女みたいな人が気になる! ビーズのヴェールをかぶってる人は少しアルブレヒトと絡むシーンがあってよかった、けどこちらももっと衣裳を見たかった! と思ったらこんな動画が。ありがとう、ENB!
今作では、アルブレヒトの正体が暴かれる場面として、大公がアルブレヒトに音を立ててキスするシーンがあるのですが、なんだかシチリアマフィアとかの「こいつは仲間だ」と内外に示す身振りのようだな〜、と思って見ていました。オリーブ園でのユダからイエスへの接吻も思い出すシーンです。というか、相手の身分を周囲に知らしめる西洋的文脈でのキスシーンは、そもそも聖書のあれに端を発しているのかもしれないけれど。
あのキスの、派手で際立ったジェスチャーじゃないと意味がない、親密さのない、中身のこもっていなさが怖くて、アルブレヒトもそういう世界からの逃避先がジゼルだったのかな、とか。原作と違って権力者側に戻れない怖いラストも、裏切り者は去れ、あるいは、一度転落すると元の位置に戻るのが難しい現代っぽいな、と思いました。
そんなわけでアクラム・カーンの『ジゼル』、最高なので東京は12月14日~21日、札幌、大阪、名古屋では12月20日まで、神戸では12月21日~1月3日に上映されますので、ぜひ行って目撃していただきたいです!
ところでENB公演といえば、英語ツイートで「結局このイメージ写真と違ってプレシャス・アダムス、白鳥踊ってないじゃん」の意のものを見かけて気になっています。うーん、どうなのだろう。今回の『ジゼル』ではウィリたちの一人を踊っていましたが……。
さて、東劇に行ったので久々に銀座、有楽町界隈を歩いたんですが、クリスマスのイルミネーション、大変です! 有楽町駅前はなぜか葱が林立、銀座数寄屋橋交差点近くではロシア十字的なものが!
銀座のクリスマス、どうなっちゃうの? 有楽町はまさか初音ミクとコラボ?
『マシュー・ボーン IN CINEMA/シンデレラ』@恵比寿ガーデンシネマ
東京は恵比寿で十一月二十三日までなので見に行きました。映画ならエンドロールになるところで思わずというか、思いがけず落涙。舞台は1940年の空襲下のロンドン。そこでは田舎に疎開もできない庶民はみんな、男女関係なく「灰かぶり(シンデレラ)」だったんだよ、というマシュー・ボーンの祖父母世代への思いを受け取ったと感じたからかもしれません。とにかくみんな灰色バリエーションか黒白、軍用カーキ色メインで、シンデレラの白と銀の「舞踏会」ドレスと真っ白な天使以外はくすんで煤けているのです。
ストーリーは家の中で存在感のないお父さんのやるせなさとか、ゲイなのを母に押さえつけられてる兄弟の行く末とか、主役だけにフォーカスが当たっているわけではない丁寧な人物造形はさすがマシュー・ボーン。ほかにも邪悪なのは継母だけで、姉さんたちはそれに引き摺られてただけで、芯から意地悪じゃないのもよかった。天使は『ベルリン 天使の詩』からのインスパイア+仙女のキラキラ感という感じ。
そんな翻案っぷり、演出・振り付けの無駄のなさは、シアターオーブに来日公演を見に行かなかったのをちょっと後悔。ただ、わたしにとってシアターオーブはあまり見やすい劇場ではないので……。Bunkamuraだったら行ったんだけどなあ。